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監督座談会

強くなれない、もどかしさ。

〈部活動の制約と折合いをつける。それが強くなる近道だ。〉

鈴木氏(以下敬称略)

前回のAGR Newsで岩渕氏(日本ラグビーフットボール協会専務理事)と小村OB会長の対談の中での議題として取り上げさせて頂いた内容ですが、岩渕氏が「弱いチームだと、強い学校とあまり試合ができないということも問題です。わたしが日本代表チームの強化を考えるときに、強い国とどうやって試合ができるかを第一に考えました。また、高校生にしてみれば『久我山は明治大学の1年生とやっているらしい』などと聞くと気持ち的に負けてしまう。高校生はメンタルでプレーの振れ幅がすごく大きいですが、自信がつけば振れ幅が小さくて済みます。実はこれは高校生に限ったことではなく、国の代表レベルでも同じです」と話しています。また「対戦相手の強さや練習量を知ること、それが自分たちの力量を測る目安になる」と話していました。このように考えているOBも少なくないと思います。けれど実際のところ、全国レベルの強豪高校だけでなく、東京都のベスト4に入るような高校とも、なかなか試合をする機会が少ないことが、高等部がレベルアップできないひとつの要因とも考えられます。依田監督はどのようにお考えですか?

依田氏(以下敬称略)

強くなりたかったら、強いチームとやるべきだという考えには、賛成です。ただ去年も東京高校に申し込んで試合をさせてもらおうとしたのですが、こちらの部員たちの戦う意欲がなかった。挑んでいく姿勢がなかったのでやめました。まずは同じくらいのレベルで勝つ経験をしたほうが良いので、トップ4のチームに試合を申し込むのはやめました。ただ去年の春の大会で結構いいディフェンスをしたので、他校の先生たちが見ていて、本郷高校や早稲田学院などから試合を申し込まれたりしました。いい試合をすれば継続的にそのレベルの高校と試合ができるという経験です。現状をみながら、マッチメイクしていくのが良いのではないかと思います。そういったことを考えていますので、OBの皆さんのコネクションやご協力を是非お願いしたいです。

鈴木

綿井監督は國學院久我山出身で、日本一にもなっています。高校時代に普段から全国の強豪校や大学生と試合していた経験から、今の高等部の状況はどのようにお考えで、今の中等部に足りないものとはなんでしょうか?

綿井氏(以下敬称略)

やはりその年代の子供たちが伸びていくのは、実践練習でしかないので、できる限りやっていった方が良いと思います。

鈴木

久我山の対戦相手はそういった強豪校が多かったのでしょう。また大学生とも試合をするという経験は、プラスになりましたか?

綿井

もちろんです。まず久我山や本郷のような高校と組めたとしても、一本目は出して来ない。でもそれはそれでコテンパンにやられようが、いいと思います。弱いところとやるよりは、そういうことから学ぶ。でも、まず先ほど 「戦う姿勢」と言っていましたが、本当に子供たちが久我山の二本目とやってコテンパンになった時に、「どうせ俺らは」というチームだったら、なんの学びもない。そこに至るまでに何を目指して、そこから何に繋げていくのか。その土台をまず作ってあげないと、試合をすることだけが良しではないと。それこそ怪我だけをしてしまうことも。見ていると、青学の中・高校生は、自己評価が低い。もっと自分自身を信頼して挑まないと、結局は相手が自分達より強いチームなのか、ここは弱いチームだから、といった値踏みをしてしまう。そういうところから、変えていかないといけない。

杉山氏(以下敬称略)

練習試合のマッチメイクは監督の仕事ですか。それはどこの学校でもそうなのでしょうか。監督同士のつながりで行われるのが通常なのでしょうか。

依田

他の学校は、先生がやっています。監督=先生なので。

杉山

OB会としても、相談しながらやっていかないといけないですね。

依田

今はだいぶ知り合いが増えてきましたが、一年目は他の高校の先生をどなたも知らなかったので、難しかったです。

杉山

ご苦労様です。

綿井

今は土日に練習試合を組める環境が、昔とは違います。久我山も毎週の土日は 試合をしていないだろうから、関西、九州との力の差はありますよね。関西の方がもっと、バチバチやっていますよ。

杉山

練習日数が決められているのですか?

依田

日曜日の練習回数が決まっていて、年間15回しかできません。公式試合も含め、この数しか。

綿井

わたしが高校の時は、その日数は1ヶ月で消化していました。

依田

それは全国的な制約ですか?

綿井

我々青学のルールで、キリスト教の関係で日曜日の午前中は教会に行くということで。

杉山

そういう制約のなかでやっていくというのは仕方ないですね。やはり学校のクラブ活動ということなのでしょうからね。

綿井

場合によっては練習試合でなくても。スクラムを組みに他校に平日に行くだとか。バックスの当たりをやらしてもらうとか。そういった練習も先方が受けてくれれば、できるかもしれない。久我山も早実も、本郷も。。。

杉山

ところで去年OGの冲永リサさんの協力のおかげで実現できた初等部コアラーズとのタッチフット「ラグビークリニック」での交流、中等部は残念ながら参加できませんでしたが、結果的にはどうでしたか?

依田

正直なところ、想像以上に初等部生も高等部生もすごく楽しんでいました。初等部生から、もうちょっとやりたいという声もありましたし、高等部生もパスを教えたり、やりがいをもってやっていました。第1回目としては、とても良かったと思います。

杉山

タイミングの事情があって、中等部の方は参加できなかったのですが、今後は小中高で実現できるように目指しましょう。

依田

はい、そうですね。