Special

OB会新体制発足 記念対談

Vol.4 Fun to Rugbyを始めよう

〈卒業したらこれっきりなんてもったいない。現役世代とのつながりが青学を強くする。〉

会長

つい2、3日前のAERAに掲載されていたんですが「受験をする高校3年生にとってイメージのいい、感性的な評価が高い学校」というので、青山学院が早稲田・慶応をおさえて一位になっています。「明るい校風、雰囲気がいい、クラブ・サークル活動がさかん。学生生活が楽しめる、そして自由な」というイメージだそうです。でも青山学院には昔から『繊細で、おしゃれな青学』というイメージがありました。時代が追いついてきたのか、昔から青学が時代の先端にいたのかわかりませんが、令和の時代にフィットしているのかもしれませんね。努力をしている向こう側には楽しさとか、そういったものがなければならない。それを一言で言うなら「Fun to Rugby」ではないかと思います。厳しい練習だけで勝ち上がっているチームではなく、青学の校風やチームカラーで勝ち進むこと。グランドで蝶のように舞い、楽しく、華やかであってもいいんじゃないかと思っています。

岩渕

まったく同感です。それが、青学でラグビーをやっていちばん良かったことだとわたしも思います。一方で、私の代もそうでしたが、結構良い選手は代々いて、彼らが最終的に日本代表にならなかったり、高いレベルでプレーしないというのはやはりもったいないと。彼らが活躍していくための一番のポイントは、その楽しく華やかな面としっかりとやる面のバランスをまわりがチェックしてあげることが大切なのではと思います。ラグビーを離れたところでの日常のふるまいなど、OBや周りの大人がきちんと接して行くことが、この時代だからこそすごく大事です。わたしもいろいろな先輩やコーチの方々に接していただいていましたが、現役当時っていろいろと思うことってありますよね。中学生や高校生なりに自我があって、簡単な言葉でいうなら、「また来た」とか「面倒臭い」ということなのですが。今になって思えば、本当に有難いことでした。そういった大人との関わりがないと、いい方向には行かない。それが青学の良さですし、そういうことをもう少し組織的にやっていけば、中高大、初等部を含めてつながっていける。

会長

今は昔みたいに先輩面するより、先輩が後輩をちゃんと応援するし、面倒見ますね。そういう変化も青学らしい文化ですね。

岩渕

もともとそれが、青学のよさだと思うんですよね。怖い先輩もいましたが、いい先輩、優しい先輩が多かった。中学、高校では、そういう大人が関わるというのは、選手たちにとって大事なことなのではないかと。

会長

若いOBたちがもっと一緒にプレーすることが大事だということを、あなたが口にしていたと聞いたのですが。

岩渕

まさにその通りです。中学生とかですと「大人と試合して抜けた」ということが自信になる。中学生、高校生を教えるのは結構むずかしくて、あまり意識的に、論議的にというよりは、動けるOB選手たちがいいプレーを見せてあげるということがすごく刺激になります。高等部に入ってラグビーをやっていなくても中等部に行って練習するとか。大学でラグビー部に入っていなくても高等部や中等部に行って練習するとか。そういう先輩が一緒に練習してくれるというのが、現役にとって一番ありがたいし、なにより楽しいと思うんです。

〈恥じるプレーや生活態度があってはならない、青学ラグビーの伝統と真髄がそこにある。〉
会長

ぜひOBの方々も現役の世代に目を向けてくれたらいいなって思います。最後になりますが、アスリートとして、人間として、身につけておくことってありますか。

岩渕

やはりそれは、これまで青学で先輩方が我々に教えてくれたことと同じで、「自分で考えて、自分で判断していくこと」が、大切なのではないかと思います。社会に出てもそうですし。すべてラグビーの試合と一緒で指示があるわけではないので、指示がないと動けないというのは、社会に出てからもやっていくのは難しい。ラグビーを通して教わってきたことは、今の自分の大きな力になっていますし。現役の学生たちにもラグビーを通して身につけてもらえればと思います。そういうラグビー選手を今のスタッフの方々にも育てていただけたら。

会長

「試合になったら臨機応変に考え、自分で判断し行動していく」、まさに社会の中でも一緒ですね。ラグビーを通して成長する。そして将来、社会の中で活躍して、その活躍の中でまたOB会を通して、現役世代にフィードバックしていく。学生たちも、頼れる兄貴分的な人が身近にいれば、たとえば就職相談に行ったり、OB訪問をしたりできる。そして社会人になったあとでも、仕事などで壁にぶちあたったりしたときには、相談できる。そういうサスティナブルなつながりのあるOB会の組織にしていきたいと思います。そのためには、第一線で日本のラグビーを動かしている岩渕さんには、青学ラグビー部へのフィードバックを期待しています。これからもぜひ、よろしくお願いします。

【対談を終えて】
海外でも活躍をしてきた岩渕さんに訊いてみた。アスリートにとって大事なこと、大切にしていること。

語学は当然できたほうがいいと思いますし。社会にでて、自分が生きていく力をつけていくことはもちろん大切だと思います。ただ、語学ができたほうがいいとか、何ができたほうがいいというよりは、「自分がやりたいことに向かってなにが重要かということを判断できて、しかもそのために努力できるかどうか」ということがアスリートにとっても、またどんな人にとっても重要なことだと思います。結局は、英語やフランス語ができるようになるには、時間を割いて努力しなければ絶対に叶わない。誰しも楽をしてやっていくことはできません。そういったひとつひとつは、たとえば、小さい子供が足が速くなりたいと思ったなら、よく寝て、ご飯をたくさん食べて、外に出て走るしかない。すごい名案とか素晴らしいアイデアということではなくて、当たり前のようにそういう思考になることが大事だし。その思考をして、かつそれが実行できることがもっと大事だと思います。

その「思考」というのは、ご自身ではどこから始まったと思いますか?

それは、青学のラグビー部はグランドがないし、でも勝ちたいし、野球のボールは飛んで来るし、でもそうしたらどうするか。野球部と話しをして、この日は自分たちしか使えないようにするために交渉する。そんな小さい積み重ねをすることです。勝とうと思った時に、いまのままじゃ絶対勝てないとはっきりしている、じゃあどうしようか。たとえば高校生なら、國學院久我山、いまなら早稲田などがどれくらい練習をしているのか、じゃあそれよりも練習時間が長くできるようにするにはどうしたらいいか。または練習をしなくても勝てる戦術がどうしたら身につくのか。そうやって考えていく必要があると思います。今はまだそういった思考になっていないと思うんですよ。だから現状をきちんと把握して、客観的にしっかりと分析をして、そこにいたる明確な筋道をたてて、かつ実行できるか、ということ。当たり前のことを当たり前にできるかどいうかといことなのでないかなと思います。それは別にチームスポーツだとか、大人とか子供とか関係なく、あるいはラグビーということも関係なく、社会に出たらやるべきことだと思います。それは、ラグビーを通して、わたしが教えてもらったことだと思います。